第5章 恋情と嘘
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「憂鬱な気分はどこかできっと晴れるだろう」
未亜は無理やり体に言うことを聞かせて、とある場所に向かっていた。
がしかし、その場についても気分は晴れず、立ち入り禁止のロープをくぐるとますます気分は重たくなった。
五条のマンションに住み出して4日目の晩。急に刈谷からメールが来て五条に殺されるべく場所と決行の日を指定された。
メールが届いたのは、例の一夜があった翌日だったのだが、調べないといけない事があるといって、その日五条はマンションには戻らなかった。
あんな事があった翌日に、どんな顔をして会えばいいのかもわからず、また、これ以上悟に深入りしたら、この計画が続行出来なくなりそうで、未亜にとっては五条が帰ってこなかった事は逆に都合がよかった。
マンションを出て3時間。随分と郊外まで未亜は足を運んでいた。どうやらゴルフ場として開発しようとしていた土地だったらしい。
辺りを見渡すと中途半端に切り崩された山の斜面がむき出しになっている。
芝がひかれるはずだったところは、手付かずの状態で自然発生した雑草が無造作に地面から顔を出していた。
やりたくない、そう思う気持ちとは正反対に仕えている特級仮想怨霊の方は解放してほしくてうずうずしているようだ。
母親を助けるため、そして、五条とその周りの人間を特級呪物から守るために、五条の残穢が残る私の死肉が必要なのだ。
決心を緩める訳にはいかない。
刈谷のメールによると上層部から五条に私を殺る正式な指令も出たらしい。
日は少しずつ傾いてきて、古い電気配線にぶらさがった工事用のランタンに、ぼんやりとあかりが着き始めた。
そろそろか。
帳を下ろしたらこの気持ちともおさらばしよう、切り替えなきゃ、と覚悟を決めて俯いていた顔をまっすぐ前に向けた。
「闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」
帳を下ろすとすぐに最強呪術師は現れた。
キタ――。