第5章 恋情と嘘
上から見下ろしてくるその視線は、何かに突き動かされるように真っ直ぐで、躊躇いは見られなかった。
それに加えて色情を帯びて揺れるブルーの虹彩がほんのり届くオレンジの間接照明と重なって艶やかさを醸し出している。
未亜は動けなくなってしまった。
――悟ってこんなんだったっけ?
身体全体がドクッドクッと心臓から流れる血液で波打っている。目を覆っている時とは違う色気を漂わした瞳がすぐ近くまで来ていて、身体がじわっと汗ばむ。
その間もゆっくりと五条の顔は近づき……
「んっ……」
五条の唇が未亜の唇に重なった。その唇はすぐには離れず角度を変えながら何度もついばみ、徐々に深くなっていく。
制止させようと五条の腕を掴んだが、掴んだ腕のバスローブが引っ張られ、はらっと肩から背中へ落ち、鍛えられた胸板が顔を出した。
五条のキスは一向に止まる気配がない。深いところに舌を入れられ未亜もそれに応じる。
二人の息が徐々に上がり、はぁ、はぁ、とどちらからともなく熱い吐息が漏れた。
苦しい、ほんとうにもう息がもたなくなる!
そう思った時、五条は唇を解放した。様子を伺うような、どこか気遣うような視線が未亜に向けられている。身体の緊張は知らず知らずに解けていた。
暖色系の柔らかい光がほんのり二人を照らすと、五条は再びゆっくり顔を近づけ、今度は優しく唇を濡らすようなキスを降り注ぐ。