第5章 恋情と嘘
記憶のピースをあてはめていく……。
バスルームを出たあと、五条は入れ替わりにバスルームに入り、その間未亜はソファーベッドに腰かけてスマホを眺めていた。
しばらくして左サイドから大きな影を感じてスマホからその影の主に目を移すと、こっち、と左腕をつかまれ立たされた。
バスローブをまとった五条は未亜を持ち上げ肩に乗せて、寝室の方へ足取りを向ける。
「ちょ、ちょっといきなりなに?」
「こっちで寝るんだよ」
「は?」
抱えられたまま、寝室のドアをパタンと閉められた。中央に置かれたベッドにストンと落とされ五条がドサッと覆いかぶさってくる。
仄暗いが、入り口付近にあったフロアライトからだろうか? やわらかな暖色系の光が部屋にほんのすこし温かみを醸し出し、五条の白いバスローブが柔らかなオレンジ色に染まっている。
「男のマンションにのうのうと泊まってさ、何も起きないとか思ってる?」
「待って、意味がわからない。なにこれ? 悟は確かにバカだけどこういうことする人じゃないでしょ」
「ディスって持ち上げるのやめてくれる? ふふ、僕のことどんな善人だと思ってんの? これだから君は」
「だって……4年前は」
言いかけて未亜は言葉を止めた。あの時と今とは状況も2人の関係性も違う。
そんな話を持ち出すこと自体、いつまでもそこから抜け出せていない自分を五条に曝け出すようなものだ。
もう4年半も経っている。別人のようになっていても不思議ではない。
五条は少し体を起こしてサングラスをサイドテーブルに置くと、再び未亜に覆い被さり顔を近づけて言った。
「だよね。あの時、未亜のマンションに行った時、なんで襲わなかったんだろうね。君から誘ってきたのに。ここに泊まった時もさ、髪なんか撫でて寝かしつけたりして……」
――髪? 撫でて? あれは、夢じゃなかったの?
ほんの一瞬、五条は寂しげな瞳を見せたような気がしたがそれは0.01秒くらいの出来事で、後は何一つ表情を変えず、顔を近づけてくる。