第5章 恋情と嘘
「何も問題おこしてないよね」
「まあ」
昨日とさして変わらない会話だった。無言で食べるレトルトカレー。
カチャと皿に当たるスプーンの金属音、水をお替りしたときのウォーターサーバーのコポコポというタンクの音がやけに大きく響きわたり、2人の無言を否応がなしに自覚させた。
五条と未亜はテーブルをはさんで斜め向かいに座り、目を合わすこともなく食事を終えた。
「先にいただくけど」
未亜はバスルームを指差しながら、五条に声をかけ、彼が首を縦にふったのを確認してから、バスルームに入り入浴と歯磨きを済ませ、髪を乾かした。
寝床を作ろうとよいしょと5人掛ソファーの肘掛けを持ち座面をパタンと広げる。
背面のレバーを引いて背もたれを倒せばソファーベッドに変身する。初日は五条がやってくれたが、昨日は自分でやっているから今日はスムーズだ。
これで五条に借りた大き目のクッションと肌布団をかければ簡易ベッドの出来上がり。
五条がリビングでの用事を済ませ自室へ行ったら、すぐに明かりを消して横になろうとソファーベッドの背もたれを少し斜めにして腰かけた。
と、ここまでは昨日と変わらない夜だった。
何でこうなったのか? いったいなぜそんな流れになったのか? 全く理由はわからなかったが、朝起きると未亜は五条の寝室にいた。
目を開けると、隣に五条悟がおり、こちらを向いてすーすーと寝息をたてて眠っている。視界に入ってくるのは顔だけではない。
掛け布団は脇に挟まれて五条の身体を覆っているが、鎖骨から上は見えている。
どう見たってそれは少なくとも上半身は裸で寝ているんだろうと想像できる。
気だるい体を身を捩るようにしてシーツに手をつき、上体を起こすと、自分も同じように何も身を纏っていない状態だと気づいた。
思わずベッドの足元に散乱していたルームウェアを手繰り寄せ、胸を覆う。
やっぱり……したよね?