第5章 恋情と嘘
呪詛師は震えながらも渾身の呪力を込めて遠隔から目隠しの男に必殺の術式を飛ばした。
が、煙がたちこめるだけで、次の瞬間にはまた目隠しの男が現れこちらに向かって歩いてくる。
当たっている感じがしない。
攻撃を重ねるたびにどんどん視界の中のその姿が大きくなる。
3回目の攻撃をした後、煙のもやが晴れると目隠しの男はすぐ目の前にいた。ひやりと垂れた汗が異常な冷たさで頬を伝った。
強いなんてレベルじゃない、こいつは次元を超えたバケモンだ。目隠しの男に指で額をさされている。
「死ぬのは君でしょ? っと言いたいところだけどその前に聞くこと聞かなきゃね。こっちも仕事なんでね。……黒幕だぁれぇ? まさか君1人でこんな大それた計画したわけじゃないよね?」
「知らねぇー知らねぇーよ、ただ言われたとおり呪霊使って、人殺ししてただけなん――」
「あ゛知らねぇわけねーだろ、どの脳みそがほざいてんだ、あ?こっちはすべてわかっててお前に猶予与えてんだよ」
「ひぃいいい! やぁああ」
つま先で頭蓋骨をぐりぐりと踏みつぶされ今にも眼球まで飛び出しそうになり、男は観念した。
男は黒幕とは会ったことがないが、でも名前は知っていると飛び出しかかった眼球を押さえながら怯え怯え目隠しの男に伝えた。
名前を告げると目隠しの男は、なに!? と殺気だった視線をもう一度男に向けたが、すぐに冷静な顔つきに戻り近くに仕えている眼鏡の男に告げた。
「この呪詛師の拘束、頼んだよ。まだ何か隠してるかもしれないから尋問しといて。何かわかったらすぐに連絡ちょうだい。それともうひとつ。――一条未亜について調べて。早急に」