第5章 恋情と嘘
それから五条と会話をすることは減ったが、残り少ない学生生活だったし、硝子と3人でしゃべっているときはこれまでと変わらない雰囲気で、任務を淡々とこなしながら卒業の日を迎えた。
五条と別れてからどこか気が抜けてしまったのか、時々任務でミスをすることがあり、助けられる人を助けられなかったり被害の規模を広げてしまうことがあった。
強くなりたいと思って頑張ってきた自分は何だったろうとよくわからなくなり、目の前を見ると五条悟という圧倒的な存在があり、そこには追い付けない。
ーー弱い奴は嫌いだから
五条の別れの言葉が脳内でリフレインする。
五条にとって、私はいつまでも弱い存在に違いない。
「お前にしか出来ないことがあるんだから、それでいいだろ」
その言葉を受け入れていれば何かが変わっていたのだろうか?
結局私は弱虫で、五条からも呪術からも逃げたのだ。任務がこなせず弱い私を五条に見られたくなかった。
卒業を目の前にして未亜は担任に言った。
「高専を出たら一般人として生活します。もう呪術界には戻りません。すみません。ここまで育てていただいたのに。万年人手不足なのに……。本当に本当にごめんなさい。後、これは私の最後のわがままですが、五条にはこの事は黙っておいてもらえますか? 色々と気を使わせるのが嫌なので」
担任はこれまでの未亜と五条の経緯を知っていたので咎めることなく承諾した。
学校を去る最後の日も五条は任務で遠征していた。
「もうそろそろ新幹線つく頃だと思うけど……」と周りは気にかけてくれたが、会えばこの4年間の思い出があふれてきそうだった。
最後に「好き」とか伝えても仕方ない言葉を言ってしまいそうで「ありがと、よろしく伝えておいて」と言葉を残すと未亜は深くお辞儀をして学校を後にした。