第5章 恋情と嘘
五条の手から閃光が2発放たれる。壁に深くえぐられて特級仮想怨霊は消滅した。
「生まれたてで威勢がいいじゃないの。くっくっくっ。急に飛びかかってくるとかさ、もっとちゃんと躾しとかなきゃー。だてに崇徳天皇の子孫じゃないよな、ほんと」
五条は言葉を続ける。
「まさか、とは思うけど去年の12月24日に起きた夏油傑の事件、あれにも1枚かんでるんじゃないよね? 傑はあのとき、特級仮想怨霊、化身玉藻前(けしんたまものまえ)を呪霊操術してた。まさか君が餌付けしたのを傑に渡したんじゃないよね?」
夏油とは高専から離反したあのときから一度も会っていない。連絡をとるどころか連絡先も知らない。
去年起きた事件は、母親の琴から聞いた以外はニュースで惨劇を聞いただけで、知る由もなかった。
でも、ここで私が夏油と絡んでた方がより私は悪者になるんだろうか? そう考え未亜は答えた。
「さぁ、どうだろ」
五条はガタンと立ち上がった。目隠しを半分上にあげ、そこから現れた青く鋭い眼光で未亜を見下ろしている。
「正気か未亜? そんなに僕に殺されたい?」
その言葉には一ミリの冗談も含まれていなかった。背筋がぞぞっと凍るような空気が流れる。
しばらく未亜を睨みつけた後、五条はため息をつき、目隠しをもとに戻して話を続けた。
「それだけの力があって、そもそも君は何をやってんの? 僕の後輩の七海知ってる? ほら1個下の。あいつさ、呪術師辞めるっていって高専出たあとサラリーマンになったんだよね。でも4年ほど前かな、電話があって。自分の適性を見極めた結果こっちに戻るっていって脱サラしてきてさ。今、七海は1級呪術師で僕の代わりにいろいろと活躍してくれてて助かってんの」
「君は救えない命を救いたいんじゃなかったの? それともまだビビってんの? ……あ、ビビッて結婚してお嫁さんやってるんだっけ?」
悟は私が結婚したと思ってるのか……。
でもこれが私と五条悟、一条家と五条家の因縁なのかもしれない。うまくいかない運命。
「結婚はしてないし誰ともお付き合いしてない。あとこれ、もう使わないけど捨てたら五条家に祟られそうで困ってたんだよね、返す」