第5章 恋情と嘘
――2018年6月――
東京都立呪術高等専門学校
目を覚ますと、未亜は部屋一面、お札で覆われた空間に椅子に座らされ、拘束されていた。両手は床から伸びたしめ縄でくくられており身動きがとれない。
「顔あげて」
……
「おつかれサマンサー。君はほんとによく僕の人生の要所要所に現れるね……。腐れ縁ってやつかな」
そこにいたのは、五条悟だった。
最後に会ってから約4年半。もう会わないと思っていたのにこうなってしまうのは4年に1度うるう年が来るようにめぐり合わせる必然なんだろうか。
目は目隠しで覆っていて髪が逆立っている。この風貌を見るのは初めてだ。
薄ら笑う表情はおそらくこの4年半の月日の中で、いろんな人や仲間の死に目に会い、呪術界の穢れ、世の無常を経験してきたんだろう。
逆にちょっといきつくところまでいって戻ってきたような、そんなテンション。
久しぶり! なんて4年半前に話したような和やかな雰囲気ではない。
口調はハイトーンだが、徹底的に尋問してやる! そんな空気が漂っていた。
「で、虎杖悠仁を殺そうとしたっていうのはほんと? 僕のかわいい生徒に手を出したのがまさか君とはね」
「虎杖悠仁は宿儺の器。つまり虎杖悠二はいつ呪いの王になってもおかしくない。いくら五条悟でもそれを生かしておく権利はないでしょ」
「よく言うよ一般人の君が。こっちの世界に首つっこまないでくれる? これ以上何か起こすようだったら僕も黙っちゃいないよ。とりあえずその悠二を襲った特級仮想怨霊、今すぐ解いて」
「……じゃあこの腕のしめ縄ほどいてよ」
「ほどかなくても出来るんだろ、舐めんなよ」
「……出来ないっていったら?」
「君ごと祓う」
「はーっ、じゃあ、解放したらさ、腕の拘束、解いてよね。あと、この子、成長してるからどうなっても知らないから。
華部大天経…寂滅道場塵遮那品」
未亜が術式を詠唱すると煙のように特級仮想怨霊が現れた。
「へぇー、こんなの餌付けできるんだから、やっぱり君は恐ろしいね。不確定要素は悠仁と変わらないと思うけど」
特級仮想怨霊は主従関係が解放され、自由の身になり五条に向かって飛びかかっていった。
ドーーーーーン。ガガガ!!
ドガーーーーーーン