第4章 交錯
あの人誰なの?
彼女はいるの?
私のことどう思ってる?
……今でも悟が好き
なに一つ聞けなかったし言えなかった。
発端は傀儡子のせいかもしれないが、結局は自分が五条を信じることが出来なくて、嫌われる事が怖くて、傷つきたくなくて、五条悟という人から逃げたのだ。
"いつも逃げてばかり。呪術からも悟からも。4年前から何ひとつだって変わってない"
未亜はあきれるほどに自分が嫌になった。
もうすぐ悟の24歳の誕生日だった。
12月7日に2人でお祝いしていたかもしれない未来を思うと未亜は激しい後悔に襲われた。
もし今ここに硝子がいなかったら、体中の水分が抜けて死んでいたかもしれないと思うほどに嗚咽した。
硝子は震えが止まらない未亜を大丈夫だからと何度もなだめて落ち着かせてくれた。
――どれほど時間が経っただろうか。未亜が気がついたとき、そこはベッドの上だった。
真っ暗で何も見えなくてテーブルライトをパチっとつける。あたりを見渡すと誰もいない。
"目が覚めたら食べなよ"
テーブルの上にはお粥が入った鍋と硝子のメモが残されていた。
◇
その後、未亜は合コンの彼に「ごめんなさい、お付き合い出来ません」と謝り、断りをいれた。
母は、楠本からもらった手切れ金を五条家に返しに行ってくれた。
数か月後、五条家の楠本氏が破門され、さらにその後消息不明になったと母経由で耳にしたが、それきり五条家の話を聞くことはなく、年月は過ぎていった……。
もう二度と五条悟に関わることはない……。
この時未亜はそう思っていた。
それでもまた会うことになってしまうのは、一条家と五条家に科せられた呪いなのだろうか?
――2018年4月――
一本の電話が鳴り、その電話を受けとった未亜はその運命へと向かうことになる……。