第4章 交錯
3日ほどして硝子が未亜をたずねてきた。硝子とは高専の時からのつきあいだ。嘘をついてもほぼバレる。
未亜は硝子との会話で隠し事はできなかった。
それでも今回の五条のことはもう吹っ切れたと、関係ないと、強がりを見せたかった。
少し痩せた? と硝子が心配そうに顔をのぞきこむ。
「久しぶりに顔見たくてさ……どうしてるかな? って。えーっとなんだ、その、大丈夫?じゃなさそうか。……最近、五条と会ってたんだろ?」
「え、あ、うん……。でも大丈夫、もう、あいつさ、わけわかんないんだ。知らない? だいぶん前から彼女いるの、こーんなふわふわの髪の」
未亜は髪を羽毛に見立てて手をふわふわさせる。
「そんな彼女いたような気は……するけど……でも確か別れてるはず。だいぶん前にすっぱりと。五条が飽きて」
「は? 飽きた? やっぱりクズ。じゃあまたお見合いで復縁したのかも。そんな相手がいるのにさ、私の誕生日にマンションまで薔薇とか持ってくるし。かと思えば五条家からは別れてくれって手切金渡されてさ。別に友達以上の何かがあったわけでもないのに意味不明で」
「ちょっと待って、お見合い? 五条が? それほんと? そんな話、高専でも術師界でももちろん五条からも聞いたことない」
「ほんとだって、まだ水面下の話なんじゃない? まあでも、別にどうでもいいけど。何もかも完全に終わったんだ……。もう今は連絡してない」
「その件、五条に確認した?」
「して、ない。本人には確認してないけど、私見たの、悟のマンションに行ったら、その、ふわふわさんと……キスしてた。腰を抱いて一緒にマンションに入っていったんだ」
「五条の呪力は感じた? その2人、なんか動きに違和感なかった?」
「え? 呪力? わからない、結構遠かったし。でも目でとらえたのは間違いなく悟だったよ。……呪力、って、なんでそんなこと聞くの?」
硝子に言われて嫌な予感がした。そもそも楠本という男があの日あの時間にマンションに来ればわかると指定されたから行ったのであって、それ以外に婚約について入ってきた情報は何もない。
五条の呪力はたとえ離れていたにしてもあの距離なら自然に感じるもので、わからないなんてその感覚が既におかしい。
未亜の話を聞きながら、硝子が眉をひそめている。