第4章 交錯
……愛おしいも何も、もう五条とは終わってしまった。もらった薔薇の花束をそっと洗面室におく。辛くてとても飾る気になれない。
最後に見た五条の顔は、ただ怒りと絶望が静かに渦巻いているような顔だった。
なんであんな顔するんだろ? キスして泊める彼女がいるのにね。でもきっとこれで、彼女とも良好に縁談が進むはず。いや、もともと進んでたか。
ふ、と未亜は失笑する。
楠本とかいう人が言ってた五条家の要望も満たされた。
これでよかったんだ、これで……なんとか自分に言い聞かせて心を落ち着かせた。
――それから五条とは完全に連絡が途絶えた。