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【呪術廻戦】-12年目の真実-

第4章 交錯


 衝動的に五条が去った方向に2、3歩、足を踏み出す。ありがとうって言えてない。ちゃんとそれは伝えなきゃ。

 踏み出し始めた未亜だったが、すぐにその歩みは遅くなり20歩も満たないうちに完全にその足は止まった。

「何やってんだろ、追いかけれるわけないじゃん」

 嘘までついて傷つけて、今関係を断ち切ったのにそんなことなどできるはずもない。

 一緒にいた警察官の彼は、そんな未亜の気を知ってか知らずかなぜか得意げな表情で、やれやれと言いながら、側にやってきた。

「少し手荒な言い方しちゃったね。でも、これで一件落着! 彼、君の元カレだろ? つきまとわれてた? 職業柄すぐわかったよ。迷惑行為だよね。それに僕も君を離したくないしね」

 よくわからないキメ顔で、両手を肩に伸ばしてくる。

 あれほどさっきから五条はストーカーじゃないと言っているのに、この人は何もわかってない。

 男は両手を肩から背中に回し込み、未亜を強引に引き寄せた。

 抱きしめられたその腕はびっくりするくらいに不快で、吐き気さえも催した。

 五条にもらった紙袋が潰れそうになって彼を突き飛ばした。いや、片手で軽く押したと言った方が正確なのかもしれない。

「今日はもう引き取ってください。プレゼントもいりません」

 彼は驚いたに違いない。

 鍛え上げられた体でぎゅっと抱きしめた華奢な女に、ほんの少し胸を押されただけで、10歩も後ろに後退し、尻もちをついてしまったのだから。

――呪術師をなめんな
 五条に対する侮辱の分まで、上から彼をにらみつけた。



 マンションの部屋に1人戻ると急に疲れがこみあげて、洋服のままベッドに倒れ込んだ。

 頭に残る残像はあんなデートなんかよりほんの数分顔をあわせた五条悟のことばかり。

 紙袋の中の赤く染まる薔薇を見ていたら、昔、告白された時のほんのり紅潮していた顔を思い出し、ふと愛しさが込み上げる。


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