第1章 再会
「あ? おーよくぞ聞いてくれたね。僕が今何してるか知ったらきっと未亜は驚くよ」
「なに? もったいぶらずに教えてよ」
「じゃあ発表します。ジャーン! 学校の先生でーす! 高専のね」
「嘘! 悟が? 帳はらずにお屋敷まるごと破壊して怒られてた悟が? 先生?」
「そ、先生」
五条がスマホの写真をほら、とこっちに見せてくる。そこには、桜の下でふざけてじゃれあっているような学生と五条が写っていた。
「へぇー、悟が先生ねぇ、まぁでもありかも。性格や人間性は別として、呪術師としては最高のお手本なわけだし、学ぶことも多いよ」
「お前、ひとこと多くないか?」
「誰かさんのせいでこうなったんでしょ」
「は? 誰だそいつ?」
拗ねたような顔で不快感を見せる五条を見て思わず笑うと、五条もつられて笑い出し、目が合うとさらにおかしくなって2人はクスクスと笑った。
何年も会っていなかったのが嘘のように二人の時間が昔に戻ったようだった。五条は教育の道を選んでやりたい事があるとかで、少しずつその夢に向かって進んでいるらしい。
――夢か、高専時代にはそんな事言わなかったな。
そう思うと少し時の隔たりを感じた。がしかし、4年という月日の間に2人は術師と一般人という別々の道を歩んだのだから、それも当然のことかもしれない。
カフェに入ってから、3時間は経っただろうか? 五条はケーキセットから抹茶パフェにプリンアラモード、今はクリームソーダーのアイスを食べている。以前にも増して甘いものを摂取しているようだ。
話の区切りがひと段落したら未亜はそろそろ切りあげようと考えていた。これ以上一緒にいたら尾を引いてしまうかもしれない。「お冷のおかわりいりますか?」と店員さんにたずねられ、いいえと断った。
「今日は楽しかったよ。悟、忙しいんでしょ? 久しぶりに会えてよかった」
「おいおい、待てよ、忘れてるよ」
「え? あ、私のケーキセット代? ごめんごめん。今払うから」
「ちがうちがう。忘れ物取りにきたんだろ?」
久しぶりに再会した五条との話に夢中になってすっかりその事が頭から抜けていた。そうだった! 忘れ物! ……でもまさかこれを悟から受け取ることになるなんて……。