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【呪術廻戦】-12年目の真実-

第4章 交錯


「そいつと過ごすの?」

 腕を掴まれたことで規則正しく動いていた未亜の手足が止まり、それに引っ張られるように手を繋いでいる合コンの彼の足が止まる。



「いや、ちが――、あ、うん。今からお祝いしてもらう予定で……」

 咄嗟に未亜は嘘をついた。

 目の奥にじんわり溢れそうなものが込み上げる。呼吸が乱れて胸が軽く上下する。

 浮かんだのは婚約者とエレベーター前でキスをしている五条の横顔――腕を掴まれて目を移した先の五条の顔は横顔だった。

 すっと伸びる鼻筋、シャープな顎のライン、少しだけサングラスの下の隙間から見える青い目。

 その顎がわずかに傾き、鼻筋がずれ、唇が重なるあの残像。

 こんなに愛おしい気持ちが残っているのに、その横顔に深い悲しみが舞い降りる。

 合コンの彼が手を離し、ぐいっと五条に滲み寄る。

「えーっと、誰? 一条さんのお知り合い?君、待ち伏せ行為はストーカー規制の対象だよ」

「あ、の……。この方はストーカーじゃなくて昔の同級生です。今は学校の先生をしていて、別に変な人じゃないから」

 何を思ったのか彼は内ポケットから警察手帳を取り出し、五条にそれをひらりと見せた。

「へぇー、学校の先生ですか。そういう職業の人が意外と道を踏み外す事件も最近多くてね。僕みたいな命をはって市民を守る仕事とはやっぱり重みが違うよな」

「あ゛!?」

 五条は術式を飛ばすような掌印を見せた。未亜は慌ててダメだと首を振り、自分もまさかの時に備え、五条に術式の掌印を向けた。

 緊迫した空気が漂う。もちろん警察官の彼は呪力が見えないので、何も感じてはおらず、高慢な態度を貫き通したままだ。

 高専時代の五条に戻ったんじゃないかと思う荒ぶった空気だった。

 静かだけど殺気だけがうごめいて、そのまま空中に浮くんじゃないかというテンションになっている。

「私が言ってる意味わかるよね……? ”ふつうの人” だから……。お願いだから落ち着いて。悟とは関係のない人だから」

「ふっ、別に落ち着いてるよ。そうだよな。関係ないよな。だから別にこいつがどうなったっていいんだけど!! ふうん、命をはって市民を守るねぇ。さぞかし沢山の人間を助けてるんだろうな。で?? 未亜はこんな奴がいいんだ?」


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