第4章 交錯
なんでいるの? 反射的に繋いでいる手を解こうとした。
見られたくない、勘違いされたくない。
どんな目でこちらを見るのかと想像したら、今すぐこの場から逃げ出したくなった。
五条悟は忘れると、心に固く誓ったけれど本人に会うためには、まだまだ心の準備が必要だった。
好きではないとしっかり仮面を用意して、気合を入れて背筋に力を入れないと、心のネジが緩んでしまう。
合コンの彼は繋いだ手を離してはくれなかった。未亜が五条を目にしてびくっと反応したことで、おそらく知り合いだと気付いたに違いない。
歩くほどにどんどん五条との距離は近くなる。
どうしよう、悟は何でここにいるんだろう?
1歩、2歩と、歩みを進める中で何パターンものシュミレーションを頭の中で組み立てる。
ちらりと五条に視線を向けるとそこに立つ彼の姿は、呪霊を祓うときに見せるものと全く同じ姿だった。
静かに、でも確実にそこに呪力をまとって立っている。
サングラスのせいで、五条と目があっているのかどうかはこの距離からはわからない。
" その日は大事な用事が入ってるから会えない"
未亜がLINEで送った適当なメッセージ。
きっと五条はこの彼と過ごす事がそれだと思っているに違いない。あと数歩ですれ違うところまできた。
未亜は五条に声をかけようと思ったが、手繋ぎしてマンションに帰ってきているこの状況は、どう考えても話がややこしくなるだけだ。
――ここはいったん素通りして、彼と別れてから五条に話しかけよう
シュミレーションが1つに絞られた。もうあと1歩で五条の右横を通るところまで来た。
ドクドクドクという心音が頭の中まで響き渡る。
未亜はそのまま五条の真横を無視するようにすれ違う。通り過ぎようとしたその瞬間、ぎゅっと腕を掴まれた。