第4章 交錯
心の中で被害妄想や疑心暗鬼の渦が巻く。未亜は迷った。思い切って五条に、婚約者の話を聞いてみようかとも思った。
でも、あっさり認められて、そもそもなんでそんな事聞くの? お前には関係ないとか言われたら?
そう思うとやっぱり聞けない。
もう五条には会わないと決めたのだから、あえて自ら傷つきにいく必要もない。迷いに迷った末、未亜は逃げる事を選んだ。
" その日は大事な用事が入っているから会えない、ごめん "
五条にLINEをした。会えないと告げると、あれだけ空けておいてと言っていたのに、五条からはパタリと連絡が来なくなった。
既読はついているけれど、何も言ってはこない。
その用事ってなに? いつ終わるの? なんてしつこく聞いてくるのかなと思っていたけれど、実にあっさりしたものだ。
それはそれで未亜の心には、しゅんとした悲しみが襲ってきた。会わないと決めたのは自分なのに。
利用しているようで最低だとわかってはいたが、五条のことで苦しくなった時は、合コンで知り合った警察官の男性にLINEして気を紛らわしていた。
勤務中は返事はないけど、また飯いこう! と優しく返してくれる。そんな言葉に甘えていた。
――2013年11月30日当日――
カレンダーには、13時にお台場、と予定が書き込まれている。つい3日ほど前に記した文字である。
五条には、誕生日には大事な予定があるとLINEをしたが、本当は何も予定はなかった。
何もないのはいいのだが、そうなると逆に1日中、五条のことを考えてしまいそうだった。そんな誕生日はさすがに辛すぎる。
未亜は合コンの彼に会うことにした。いつまでも止まっていないでそろそろ次に踏み出さなくちゃ。
その日が誕生日だと教えると勤務日程をずらして彼は予定を空けてくれたようだった。
彼とはいわゆるデートをした。
定番のスポットめぐりだ。水族館に行き、イタリアンレストランで食事をして、最後は公園をぶらぶらと散歩する。
外はすっかり暗くなり、仲冬の寒風にあおられて空気が冷たかったこともあり、途中から彼に手を握られた。