第4章 交錯
お礼のメッセージをひとりの男性に送った。未亜はあれから、悟のことを吹っ切ろうと心に決め、会社の同僚に誘われて合コンに参加していた。
そこで知り合った1人の男性と親しくなり、先日ご飯を奢ってもらっていたのだ。
その彼は警察官で、最近は物騒だから、と時間がある時は家まで送ってくれたり、時々、食事に行こうと誘ってくれる。
正直、彼に対して好きという感情はなかったが「人を守る、助ける」という事に使命を感じている点では、未亜の潜在的な術師としてのそれに通ずるものがあり、一緒にいる時間はそれなりに話が弾んだ。
五条の方も、出張から戻ると、これまでと同じように連絡をしてきたが、仕事が今忙しいと言ってひたすら会うことを避けていた。
――会って話をしたらまた決意が揺らいでしまう。一緒にいたらまた好きだと思ってしまう。
未亜は自分で自分に歯止めをかける。五条のペースに流されてはいけない、と。
実際、未亜は、彼女とキスする所を見てしまったというのに、それは五条の婚約者だというのに何度か五条に会いたい気持ちに駆られた。
自分でも狂ってるんじゃないかと思う。ひょっとしたらドMなのかな……いやいや、違う!私は正常であいつが異常!
ひたすら心で五条をディスって、マンションでのキスシーンを思い出し、グッと会いたい気持ちに堪えた。
「なんかあった?」と一度だけ五条から電話がかかってきたが、別にと濁すと「11月30日は空けといてよね」と念押しをされた。
何だろう……。
よくよく考えて思い出した。
――11月30日は私の誕生日だ!
未亜は思った。
誕生日に悟と一緒に過ごす!?
今の関係で、それはあまりにも何もかもが不自然すぎる。その日にまさか告白される?
そんなわけない。婚約者がいるのだ。それとは真逆で、あの女性との関係を切り出されて縁を切られる可能性のほうが高い。
でもなんでわざわざ私の誕生日?
悟はどうしようもない奴だけど、そんな風にあえて人を傷つける人間じゃないはずだ。
そうなると単に私のことは、誕生日に誰かに取られないように、おもちゃのように自分のものにしておきたいだけ?