第4章 交錯
別れて会わなくなって時を重ね、種火みたいな小さな灯になっても、決して消えることのなかった五条が好きだという思い。
この4年の月日の中で、別の男性と付き合ってみたこともあった。がしかし、いつも思うことは「背の高さが悟と違う。歩いてる時の速度が悟と違う。香りが悟と違う」そんなことだった。
小さな小さな灯なのに、誰も消すことは出来なかった。時が経てば消えるだろうと自然にこの火が消えるのを待っていた。
そんなところに五条悟は現れた。再燃してしまったこの炎はきっと自分自身でしか消すことが出来ないだろう。瞼にやきついているのは、女性をひきとめて長い長いキスをしている五条の横顔。
「五条悟は忘れる」
声に出してつぶやいた。
足取りはおぼつかなかったが、なんとか正気を取り戻しながら帰宅の途についた。
◇
それから2週間ほど経った頃、五条から久しぶりにLINEが来た。彼は、日本に戻ってきてようやく落ち着いたよ、という。
"お土産買ってきた"
"11月30日にまとめて持っていく"
LINEに予定が書かれていた。何でその日なんだろう? カレンダーで数字を追うとその日は土曜日になっている。高専も休みの日に違いない。婚約者も用事があるに違いない。
――暇なのかも
未亜はスマホを何度も見ながら五条のLINEを読み返す。戻りすぎて1ヶ月前のメッセージまで読んでしまう。
読んでは戻り、読んでは戻り、くすっと笑って、また読んで……。
だめだ、また悟のことを考えている、慌てて別の連絡先の名前をタップした。
"こんにちは、この間はご馳走様でした。"