第4章 交錯
ガーッと自動ドアが開くと2人はエントランスロビーに入っていった。さすがにそこまでは近づけない。
外からそのロビーを眺めていた未亜だったが、女性の顔がロビーの明かりに照らされた時、呆然と立ち尽くした。
髪をサイドテールでまとめていたので、すぐにはわからなかったのだが、それは、以前、映画館で見たゆるふわカールの女性だった。エレベーターの前で、何やらしばらく話し込んでいるようだ。
そのまま2人を見続けていると、彼女が帰るのをひきとめるように五条が彼女の腕をひき、女性を引き寄せキスをした。そのまましばらくキスが続いた後、女性は五条に寄り添うようにして、2人はエレベーターに消えていった。
未亜は信じられなかった。
信じられなかったが、目の前で見たものが事実じゃなかったらなんなんだろう? 本当に五条だったのか? と記憶を辿ったが、遠くからだったとはいえ間違いなく彼だった。
呆然と立ち尽くし、頭は放心状態の中、ふと硝子の事を思い出した。家入硝子は高専時代からの親友で、術師を辞めてからもつながりがあったのだ。
五条のことを何か知っているかもしれないと思い、硝子にすぐにメールした。本当なら電話したかったのだが、この時間だとまだ学校かもしれない。
最近硝子も忙しそうにしていたし、電話だと取り乱して迷惑かけてしまうかも、と思い、あえてメールで未亜はたずねた。
"悟って今、どこにいるか知ってる?"
5分ほどして硝子から着信メールの通知が届く。
"南米だと思うけど。今回の出張は一部の上層部しか把握してなくて詳しくは知らないんだ。ごめん。日本と海外を行ったり来たりしてるんじゃない? どうした?"
行ったり来たりか……。ひとつため息をついた。
硝子に、なんでもない、ありがとうとお礼を書いてそっと携帯を閉じる。