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【呪術廻戦】-12年目の真実-

第3章 五条の後悔


 なぜ、呪術師をやめたのか? もう4年も前の話である。なぜやめたのかなんて今となってはわからない。

 いや、それはちょっと違う。ほんとはわかっているんだけど、思い出したくなくてわからないことにしているのだ。

 「ちょっと聞いてくれる?」と五条に話しかけられたが、後ろを振り返らないまま「なに?」と未亜は返事した。

「僕さ、後になってあん時ああすりゃよかったとか、こうすりゃよかったとか、そういうのあまり思わないんだよね。でも、2つだけ、後悔してる事があって」

「1つは傑のこと。そしてもう1つは」

 五条は一呼吸おいた。

「君のこと。――ごめん、未亜は弱くないよ、今もあん時も。それは僕が1番知ってたはずなのに、まだ、なんつーか、ガキだったからあれで守ったつもりになってたっつーか」

 五条の言葉はそこでフェードアウトしていった。しんとした静けさが2人を包み込む。

 まさに寝耳に水だった。未亜は耳を疑った。ごめん、未亜は弱くない、ってそう言った?聞こえた言葉をもう一度頭の中に落とし込む。あん時って高専の時の事だよね?

 なんで今さらそんなこと……。

「弱い奴は嫌いだから」
 高専時代の五条の顔が蘇り、未亜の心臓に突き刺さる。

 それは別れの言葉だった。あの時全てを受け入れたのに。

 自分を責めて、悟みたいになれないこともみじめで、悲しくて悩んで、それは悟の優しさかもしれないと思ったこともあったけど、それも含めて苦しかった。だから別れを受け入れたのに。

 後悔してる、ってそんな事今ごろ言われたって、私にどうしろっていうんだろう。言い返そうと、五条の方に顔を向けた。

 が、しかし、口から出た未亜の言葉は全く別のものになった。

「あ、はは、そういえばそんなことあったっけか……。どっちにしても自分で納得して今ここにいるわけだから、そんな昔のこと気にしないで」

 誤魔化すように未亜は笑った。
 五条の顔があまりにも辛そうだったから。
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