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【呪術廻戦】-12年目の真実-

第2章 元カレ


 五条の目に映るのは、恋愛対象としての自分でも、都合のいい関係としての自分でもない。ただの友達、ただの元クラスメイト。

 高専を卒業して一度だけ、たまたま未亜は映画館から出てくる五条の姿を見かけた。隣にはゆるふわロングヘアーの女性がいて、五条と腕を組み、和やかに談笑している。

 2人は劇場の出口付近で止まった。映画のポスターの前に立つと、次はこれ観る? とでも会話しているかのように、右に左にとポスターを指差す。時々顔を見合わせて、2人は幸せそうに笑っていた。

 ついこの間までそのポジションは、自分だったはずなのに、今はもう隣どころか後にも先にも彼の側に立つのが憚られる。  
 
 五条は前に進んでいるのに自分だけ時が止まっている、そんな事を思った未亜は、五条への密かな恋心を扉の奥に閉まったのだった。

 未亜は五条と再会してからずっと気づかないフリをしてきた。



――別れて4年経った今でも私は五条悟のことが好き。

 自覚するのが怖かった。一度自覚したら苦しくなるのはわかっていた。あえて考えないようにしていた五条への恋心。

 私のことどう思ってるの?
 なんでデートみたいな事するの?
 聞きたいことは山ほどあったが、全て失うんじゃないかと思うと怖くて口をつぐんでしまう。

 この気持ちを五条に見抜かれて、避けられるのも怖かった。冷たくされるのも怖かった。もう五条の事で傷つきたくなかった。

 だからあの時、五条の手が手すりから離れそうになった時、私は彼を試した。自分が傷つかない薄っぺらいやり方で。

 やっぱり私は心底弱い。未亜は自分が情けなかった。

 特級呪霊に関する調査は、結局この日もほとんど進まず、もう遅いからまた今度、と五条はひとり帰っていった。
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