第3章 鯨
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「…あ、やっぱ 似合います。 かわいいっす」
選んでくれている様があまりにもかわいくって、
試着をすることを受諾していた。
『…ん。 すごい好み』
ではあるんだけど、
「…あ、でもさっきも黒いの着てたし、同じようなの持ってますか」
『…ん?』
「俺が買うやつ、他と違うのがいいっす」
『…それは』
「………」
影山くんが選んでくれたらそれだけで特別だから、関係ないんだけど。
『いい、気にしなくって』
「そっすか」
『………』
「…いや待てよ」
何やら思いついたようなので、
その間にさっと扉を閉じて服を着替え、スタッフに渡そう…
としたら、スタッフの手には他の一着。
次はこちらをどうぞ、ということらしい。
アイボリーのワッフル素材の膝上丈のワンピース。
丈長い方が足あげたりできてラクだけど…
でもこれワンピースだけどバックのウエストのとこが離れてて、
座ってても生地に引っ張られる感じがしなくてよさそう。
「どーっすか?着れました?」
『あ、うん』
「開けてください 見たいっす」
『………』
影山くんは、あ、いいっすね。 どーっすか? って言って。
それから、うんよさそう。 と答えると
あとはもう他に目もくれることなくこれにする、という旨をスタッフに伝えた。
…私も何かプレゼントしたくなるな、とか思いながら、
でももらったからすぐに返すってものでもないしな…
ピンとくるものをぼちぼち探そうと思った。
『影山くん、ありがとう』
「いや、俺が買いたかっただけっす」
『うん。 嬉しい』
「…じゃ、帰りますか? 夕飯の材料って」
『あ、影山くんが食べたいもの作りたいなって思ってまだ買ってない』
「…そっすか、じゃあ……」
和食が食べたいとのことだったから、
野菜の種類の豊富な食品店へ行こっか〜って。
もう、市場は閉まっちゃう時間だから。
途中でジェラート屋さんに寄ってジェラートを食べて、
それから食品店で大根や蓮根に豆腐、それから筍の水煮も買った。