第3章 鯨
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それから10日間、影山くんと過ごした。
内3日間は思いつきでトスカーナの方へ行って
ダイビングとそれから温泉を楽しんだ。
夏真っ盛りでいきなり宿なんて取れないかな、と思ったのだけど
Ali Romaの広報の方が気を利かせてオーナーにそれとなく話をしてくれ
別荘を貸してもらえることになり、随分と贅沢なバケーションを過ごせた。
3日で帰るのが惜しいほどに、心地の良い時間だった。
他の時間はローマで。
影山くんは基本午前中にいろいろ動く。
ランニングやトレーニング。
それから夕飯前にまたランニング。
それはトスカーナに行ってる時もごく当たり前のように続けていた。
ぴーんとした一本の線が常に張っていて
きりっとして気持ちがいい。
意識してやる、という段階をもうとうに超えてるのだろう。
本当に、何だろうな… とにかくその空気に触れていて気持ちがいいのだ。
トレーニング後に待ち合わせて切り売りピザの店に行ったり
マーケットでランチを食べつつ食材を買ったり。
観光っぽいことは何一つせず、暮らすように過ごしていた。
別に、意図してそうしてたわけじゃないんだけど。
気が付いたら、暮らすような時間だった。
今日が最終日。
明日の朝ミラノへ移動し
ミラノ発の午後のフライトで日本へ帰る。
いつも通りに過ごしたいな、と思った。
家でご飯を食べて、歩きたくなったら歩いて、って。
今朝、影山くんが起きるや否や、セックスをした。
前から横から後ろから… そして私を上に乗せ、動かせた。
影山くんは自分が動いてる時は
なんだろう荒々しさがありながらもどこまでも丁寧なんだけど…
上に乗っている時は、容赦がない。
…なんていうか、王様感が現れる。
おら、もっとできんだろ? 足りねーよ、もっと乱れろよ。
あ? もっと腰振れ、そーだよできんじゃねーか。
じゃあ次はもっと脚も使って、ほら、満足させてみろよ。
って言われてる感じがする。
そしてそれはたまらなく色っぽく私を興奮と快楽の窮地へ追い詰める。
そして挙句、
…いいんだけどよ、いいんだけど、足んねーんだわ。
って感じで下から思い切り攻められるのだ。
いつもいつも上に乗せられるわけじゃないのも相まって
余計に特別感というか。
王様に特別に招かれたような感覚に陥る。