第3章 鯨
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それから夕暮れまでバルコニーでのんびりして、
影山くんの腹の虫が限界になる前に夕飯の支度をした。
トレーナーに管理頼んでるって言ってたけど、
自由にやっていいのかしら、とふと気になって聞いてみると
別にいい、とのことだった。
でも、こんなに意識の高い人の身体を作るものなんだから、って思うと
お酒が入ってふわふわした頭がしゃんとする。
冷製ジェノベーゼ、アサリとトマトのガーリックスープ、
白身魚のカルパッチョ、フライパンでカリッと焼いたモルタデッラ、
ルッコラと胡桃のサラダ。
完全にワインモードの献立ではあるけれど。
喜んでくれるといいな、とか。
もりもりと美味しそうに食べてくれた。
そして20時半ごろ、
沈んでいく陽をバルコニーに並んで一緒にみた。
明日は影山くんは午前中トレーニングだし、
ゆっくりと片付けを始める。
保存容器に入れたり、空いた食器を洗ったりそういうこと。
ワインとチョコレートとチーズだけはまだ出しておこっと。
影山くんが寝てからでもまた一人で飲みたい。
影山くんはバスルームへ行った。
そして上半身裸で、濡れた髪のままバスルームから現れ、
後ろから私を抱きしめる。
「抱きたいっす」
いつも、いつも、なんていうか…
オブラートに包むということを知らないのだろうか。
もしくはもう言わないでおく、という選択肢とか。
そしてそのまま彼の欲望のまま身体を重ねた。
一気に血流が良くなって、一気に酔いが回った。
ただでさえ気持ちいいのに、それはもう… よすぎるほどだった。
…っていうか影山くん。底無し。
付き合える私も私か、とは思うけども、いやそれでも底無し。