第1章 チェンバロ
「りさ子さーん!」
試合を終えた翔陽くんが駆け寄ってくる。
『へーい!おめでとー!すっごい楽しかったぁ〜!』
「まじー!楽しんでくれたなら何より!」
『…この後予定は?』
「バイトない!夜はバレーの練習あるけどそれまではない!」
『…じゃあ、どっか食べに行こっか。お酒は飲まない?』
「おれはいらないけど、りさ子さんはオフなんだし飲みたければ飲んで!」
『ありがとー どっか行きたいとこある?食べたいものとか。
昨日のお礼だから、気にせず何でもいいよ』
「…マジで! じゃあ〜 んーと やっぱり…」
すっごい一生懸命迷ってる。
『寿司でも、懐石でも… ここから離れてもいいならレブロン行ってもいいし。
いつも食べないもの食べにいく?』
「レブロン!いやっ おれはあそこなんつーか… 落ち着かなくって」
『そっか。それなら落ち着く場所がいいね』
「けど高級な寿司食ってみてーなー!」
『…笑 夜空いてる日ある?』
「明日かな、雨の予報だし。トレーニングだけして夜は空いてる」
『じゃあ寿司は明日。 今日は、寿司以外で』
「…じゃ、じゃあ日本食で!」
『おー悩んだ末大きくきたねぇ 笑』
「お好み焼きもラーメンもカツ丼も食いたくって悩みました!
それならとりあえず全部あるとこで、って」
『食べれるなら全部食べていいし、とりあえずじゃあ、そこいこっか』
あーこの感じ久々だなぁ。
私の見てくれでも、身体でも、親でも、仕事でもなく。
ただ、私を見て向き合ってくれる子。
幼稚園とか小学校にいた頃に、
たまーに出会えたような… いや、初めてかもしれない。