第3章 鯨
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影山くんはじゃがいもと豚の塊肉を。
わたしは…何だかいろいろ。
旅行中の自炊だと土地らしい素材を使ったりもしたくなるけど。
今日はこっちに住んでる影山くんとの食事だしな…と思ったら、
ドレッシングは胡麻にしようかな… じゃあねりゴマも…とか。
あれこれ膨らんでいろいろと買ってしまった。
「…それ持ちます」
『いやいや良いよ。わたし持ちます』
「…じゃあ、ちょっと貸してください」
『…?』
貸す、とは?
差し出してみると、ねりごまの瓶や蜂蜜、かぼちゃを取り出していく。
それから影山くんの袋に入っていたシリアルの箱をぼすっと私の袋に入れた。
そしてねりごま達は影山くんの袋の中へ。
「…じゃあこれお願いします」
『…はい。影山くん、ありがとう』
「ぅす」
手を繋ぎ、影山くんのアパートまで。
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「うわ、すげー美味そう」
『うん、美味しそう』
ポークカレー半熟卵乗せ、
リーフ、トマト、きゅうりのサラダと胡麻ドレッシング。
かぼちゃの煮物。 桃とキウイとヨーグルト。
「いただきます」
『いただきまーす♡』
美味しい美味しい影山くんのカレーをはふはふと頬張っていると、
ふと、影山くんの食べる手が止まってることに気付く。
そして私をじーっと見てる。
研究対象にでもなったのかしら私。
「…うまいっすね」
『うん、美味しい。影山くんのポークカレー美味しい』
「………」
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食事を終え、キッチンを片付けて…
そろそろ帰ろうかなと思っていたら、
「りさ子さん、今日泊まって行きますか?」
『え? あ、ううん。 今日は帰るよ、明日朝から仕事』
「そっすか……」
今日は、って…
今日だけでしょって、心の中ひとりで突っ込んだりして。