第3章 鯨
・
・
・
あぁ… なんていいセックスだったんだろう。
少々荒々しくも、
でもだからこそ、その器用さが際立つというか…
いや、巧いからこそ、
その粗さがたまらなくセクシーだった。
そして無駄な言葉がないのも、とてもよかった。彼らしくて。
互いの息遣い、ベッドの軋む音、シーツが擦れる音、
下の方から聞こえる水音、肌と肌の触れる音…
まるで歌のようだった。
ただただその静かに鳴る音に包まれながら身体を交えた。
旅先だ。
後腐れなく、今日この日を楽しんで、それでさっぱりと。
「…もっかいシャワー浴びないとっすね」
『…だね。 でも影山くん先にどうぞ』
「……… いや、もう一緒に浴びましょう。で、買い物に」
『………そうだね、そうしよっか』
交わることで一気に縮まる距離がある。
それから私たちは一緒にシャワーを浴び、
そしてそこでまたセックスをした。
そういえば、撮影中に水浴びてたな、なんて思いながら
後ろから貪るように求めてくる影山くんはたまらなく色っぽかった。
・
・
・
さっきの行為を取り繕う言葉もなく、
身体を拭き服を着て影山くんは先に浴室を出て行った
あの美貌に、あの器用さに、けどあのあどけなさと荒々しさって。
ずるすぎるでしょ、影山くん。
はぁ… 人を撮るというのは時にセックスをしてるような感覚に陥る時がある。
前にも言った気がするけど。
だから被写体の男性とそういうことになるのは初めてではない。
そして私の場合決まってそれは手慣れたモデルではなく、
被写体としては素人の、今日のような場合だ。
けどまぁ それでもなんというか……
影山くんは……
神がかってるな。
完璧なまでの好みのセックスにほわほわしながらちんたらしていたら
影山くんが戻ってきた。
手にはワンピースを持って。