第3章 鯨
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なんとか影山くんの住むアパートに到着。
ヨーロッパのアパートは、風情があっていい。
日本の都市ももうちょっとこう、
風情を大事にすればいいのになぁ…とか思わなくもない。
銀座の裏路地とかはでも楽しいよなぁ…
ああいう感じがもっともっと残ってくといいんだけど。
「りさ子さん」
『はい!』
「普通に買い物するの忘れました」
『…あ、ほんとだね。家に帰ることに必死になっちゃってた』
「汗流します?」
『…ん?』
「結構歩いたし、汗かいたんじゃねーかなって」
『…シャワーをどうぞってことかな?』
「あ、そうです」
『…んと 影山くんは?』
「浴びようかなって思いますけど、あ、一緒に浴びます?」
『…はい?』
「………ちげーな、間違えました。 俺後から浴びるんで、先どうぞ」
どうせ汗かいた服着るならどっちでもいいんだけどな…
まぁさっぱりするかぁ…
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シャワーを浴びてから身体を拭いてると扉をノックされる。
『はーい』
「…あの、女ものの服あるんすけど、着ますか?」
『え、それって…』
彼女の?
え、そこまで無頓着じゃないよね…
ん?元彼女?現役?セフ…
「姉のです。日本にいるんすけど、もともと服とか好きで」
『あぁ…』
ホッとしてる自分がいるのは何でかしら。
「こっちで買った服持って帰って、持ってきた服置いていったんす。
俺ん家に女の人が来ることがあれば着てもらって良いっつってました」
『あ、うん。じゃあせっかくだしとりあえずみさせてもらう。ありがとう』
「あとそこにとりあえず俺の服置いときました。
汗かいてる服シャワーの後着んの気持ち悪いかなーって」
『あ、ありがとう。影山くん、優しいんだね』
「………」
『すぐいきます』
さっと下着をつけて、鞄に入れてある機内用も兼ねた乾燥対策のいろいろを塗って…
影山くんのTシャツとジャージを着る……
大きいな。 ズボン、ずれそうだ。
まぁ、少しの間。
ていうか… セッター魂って。
こんなTシャツあるんだな。
…ふふ、これを下心はないとはいえ
家に連れ込んだ女に出すあたり
影山くんの何か、人柄みたいなものが少し垣間見えるような気がする。