第3章 鯨
私が選んだのは、
ズッキーニ、生ハムとルッコラ、ポモドーロ、モルタデッラ。
影山くんは、
マルゲリータ、パプリカ、生ハムとビエトラ、ナスとミートソース。
コロッケみたいなのも。
色が綺麗〜
ひゃー美味しそう〜
私はビール。
影山くんはミネラルウォーター。
外のテーブルが空いてたのでそこで立ち食い。
あんまゆっくり話すって感じの場所でもないけど…
話そうっていう流れのランチからここを提案するっていうその、
あどけなさっていうか、初々しさっていうか… くすぐられるなぁ…
バレーのプレーの精度がすごい(らしい)だけに余計に。
『んんん〜 美味しい〜〜〜 生地さっくさく〜〜 チーズやばい〜〜〜』
イタリア料理は素材の味がよくわかる。
小麦もチーズも野菜もハムも、それから塩も。
おいしい!!!
「………」
『美味しいねぇ、影山くんがいつも食べるって言ってたハムのやつ、ほんとおいしい!
レモンが効いてまた、美味しい!』
「………」
はぁ…幸せ…
「もぐもぐもぐって食べるの、かわいいっすね」
『ん?』
「わーって美味しい〜っつったかと思ったら、またもぐもぐもぐっつって」
『あぁ、ごめん、食べるの好きで…』
「や、全然、そのままでいいっすよ」
『影山くん、美味しそうに食べるねぇ
食べる影山くんをみてるだけでビールが飲める。
影山くんは飲まない? もし飲むならこれでよければ』
「オフシーズン中はたまに飲みますけど……昼からは飲まないっすね」
『えーーー!私は昼間に飲むお酒が一番好きー』
「その、なんか陽気な感じは酔ってるんすか?」
『あれ、ううんそんなこと…』
「撮影の時と感じが違うなって。 もっと淡々としてたっつーか…」
『あぁ…それは、ファインダー越しの君に全神経集中してるから。全集中だよ、全集中』
「全集中…?」
『えっ知らない? 海外にいたら余計に触れそうなのに。 日本人ってだけで。
あ、でもそっか、イタリア語だとなんて言うんだろうね』
「…?」
『ナンデモナイヨ』
そっかぁ、影山くんは知らないのかぁ…
でも別に薦めようとも確かに思わないなぁ。