第3章 鯨
「あ、お疲れさまです」
『うん、あ、いいよゆっくり飲んで』
「ぅす」
『広報の方とはいつもイタリア語?』
「あ、はい」
『あの人英語も上手だねー 私はイタリア語ちんぷんかんぷんだからありがたい。
通訳なしで話せるのはいいよね、やっぱ』
「…そーっすね でも、語学は苦手っす」
『うん、私も英語以外てんでだめ』
「………」
『とりあえず行くか。何食べたい?』
「…あそこ行きますか、ボンチ」
『おーいいねぇ。 地下鉄?』
「…いつもランニングがてら行って食うんでわかんないっす」
『…あぁ、自分家からの行き方しかわかんないか。 じゃあちょっと調べるね』
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地下鉄で目的の駅まで来て、
そして、切り売りピザのお店へ。
整理券を持って呼ばれるまでショーケースに並ぶピザを吟味。
やばいやばい、これめちゃめちゃ美味しそうだし、
サイズも指定できるとか、きゃーーー
「なんか佐々木さんってあれっすね」
『え、なんっすか?』
「か… か… いやあれっす。
27歳でフォトグラファーとしてこんな成功してる人はなかなかいないって広報の人が言ってて」
『そんなそんな そんなことないっすよ!』
「…だからどうとかじゃないんすけど、なんつーか…… か…か…かゎ……」
『………』
「………」
『いつも食べるやつとかある?』
「あのモルタデッラっていうハムのやつはいつも食います。あとマルゲリータと…
野菜のやつも適当に頼んでってします」
『そっか、じゃあモルタデッラは頼む』
「C settantanove〜」
(Cの79番の人〜)
「あ、佐々木さんっすよ」
『えっ今の? あ、そっかチーってCか。ありがとう、影山くんも一緒に来て!』
そうして無事にピザを注文。
欲張りたくなる気持ちをなんとか抑え4種類。
それでも少食の私にはきっと多くって、でもいろんな種類食べたくって、
影山くんに半分食べてもらいたいことを注文時に伝えた。
切り売りだから小さくもできるけど、なんだかそれも店に申し訳ない。
「いーっすけど…それなら俺のも食えばいいんじゃないっすか。違うの頼みますね」
おや、なんか今キュンとした。