第3章 鯨
「いや、バレー部じゃないんすけど」
『でも部活でたまに会うことがあったんだ』
スタッフからタオルを受け取り影山くんの頭にかぶせ
背伸びして腕も目一杯伸ばし、数回わしわしとする
カメラは肩にかけてる
オフショット撮ろうと思ったけど、なんか直接見てたいかも。
ほんと、綺麗な子。
「…あ、ありがとうございます」
『いえ、おかげさまで良い写真が撮れました。
影山くんが今の話、聞かせてくれるなら私は喜んで聞きたいんだけど』
「………」
『風邪ひいても困るし、とりあえず着替えておいで』
「…ぅす」
『…それで、聞かせてくれるってことで良いのかな?』
「はい」
『じゃあ、私とりあえず今撮ったの向こうでチェックしてるから。
その後にでもお昼、一緒に食べよっか』
「…ぅす」
『…あ、着替えは持ってきてもらっとくね』
「あざっす」
PCにデータを移し、早速写真のチェックをする。
今はとりあえず、チェック。
絶対にいい写真撮れた確信はあるけど、
だから切り上げたわけだけど。
「わーこれちょっとわたし今、ずきゅってしました」
「俺もこれだいぶ唆られた。この企画毎回思う。俺、男もいけるかもって」
『うん、いいの撮れてるね。じゃあ今日ひとまず、これ片してかいさーん!
自由時間で。 また明日の朝、ホテルのロビーでね〜』
上下スポーツブランドの服に着替えた影山くんがソファに座ってる。
スタッフに渡されたんだろう、カップに入った何かを飲んでる。
付き添いできていた広報の方と改めて挨拶をする。
そしてこの後食事をする旨を伝えると彼女は先に帰っていった。
「Oh, and one more thing... Tobio is terrible with directions. He’s just awful」
(あ、あと、トビオはやばいくらい方向音痴。伝えとくね)
去り際にそう言い残して。