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真っ白でいるよりも 【ハイキュー】

第3章 鯨








『…ん? なに?』






おおーいいね、色っぽい。
いい目、してる。







「鯨の話、聞かせてください」

『…あぁ、いや大した話じゃない。ただ、鯨になりたいなって思う』

「…サーフィンとかするんすか?」

『ん? サーフィンはしたことある、くらいだけど、ダイビングが好きで』

「………」

『したことある?ダイビング』

「いや、ないっすね」

『すごいよーバカになるよー そして自分の存在を知る 地球の大きさを知る』

「………」

『それでね、私何度か鯨と泳いだことあるの』

「へぇ、すごいっすね」

『ううん、別に私はすごくはないんだけど、ただ、鯨は本当にすごい』

「………」

『大きくって、大きくってね… だだ漏れになる感じ』

「…ダダ漏れ?」

『それでね、生まれ変わって鯨になったら海の中で歌って暮らすの』

「…歌」

『言葉はないの。 でも歌はあるの。 …それでね』






…あ、ちょっと興奮して喋りすぎた。

でもどうしてだろう、影山くんの目が…
どんどん色を孕んでいく

まさか、鯨フェチ?



…なんてね …誰かを思い出してるのかな。
いいね、この話がひと段落ついたらもうそれで撮影は切り上げよう。







『鯨の心は人間よりずっと ずっと大きいから… 歌もいつまでも続くの』

「…心が、ずっと大きい」

『…それで、君の頭には今誰が浮かんでるのかな?』

「………」

『………』








うん、今日一番の表情。

もどかしそうで、苦しそうで、でもどこか気持ちよさそうで…
最高に色っぽい。









よし、いいの撮れた。








『…オーケー……』
「…高校の時に…」







おぉ、話し続けるのか。
もう切り上げようと思ったんだけど。







「高校の時に、部活でたまに会うことのあった人で……」

『へぇ、バレー部?』








スタッフにタオルを持ってくるように指示して、
影山くんの隣に向かう。







それが合図となり、スタッフたちは現場の片付けを始める。
まぁ、この浴室によく光の差し込む午前中、
壁もバスタブも床も白いここではレフ板も照明も必要なかったけれど。

自然光のそのままの差し込みだけで、なかなか良いのが撮れたと思う。








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