第2章 玉ねぎ
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2021.9月。
今日は覚の店のプレオープンのイベント。
私のことも招待してくれた。
いつも通りの朝食を食べ、いつも通りに見送り、
ティータイムにオープンのそのイベントまでの時間を家でゆったり過ごす。
…はずが、覚を見送った途端、いつも通りにできなくなる。
もう一度、覚の情熱大陸観ようかな…とか、
あ、やっぱり鬼滅の刃もう一度…とか、
シャワー浴びようかな…ってさっき浴びたし…とか、
何やらよくわかんないまま家の中をうろうろしてしまった。
そうこうしてるうちに支度する時間になって、
よそ行きのドレス、アクセサリーに身を包み、
メイクして、髪を軽く巻いてセットして覚の店に向かう。
Chocoratorie Grenier
ショコラトリー グルニエ
音が綺麗。私は好き。
日本語に訳すと
チョコレート菓子専門店 屋根裏。
だろうか。
なかなか、物語っぽくてかわいい。
路地裏にひっそりとありそうな感じ。
覚の店は、名前だけで考えると11区っぽい。
けど、堂々とシャンゼリゼ通りにオープンだ。
そのチグハグさがまた愛おしい。
レセプションにいた子は、
前いたお店に覚のチョコレートが大好きで入った子で、私とも顔見知り。
招待状を見せる前から、顔パスしてもらい店内へと入る。
屋根裏感はゼロ。
高級ショコラトリーだ。
スタッフの制服は私が勤めているブランドのデザイナーが手がけた。
覚は何を企んでるんだろうな。
小さなお店を少ないスタッフでやっていくってことだってできるだろうに。
こんな大きな通りで、こんな品のあるお店を構えて。
妖怪がパリに来る人々を乗っ取ろとしてるみたい。
好きだな、この場所。
高級感は溢れてるけど、
洗練されててそしてどこか暖かい。
逸れものもみんなみんなまとめてどうぞーって感じがする。
何でかは具体的にはわかんない。
でも、わかる。 覚の店だから、そうなるんだ。