第2章 玉ねぎ
取材のときなんて言ってたっけ…
オンエアで使われるといいな。
3月にオンエアだって。
ネットで観れるからこっちでも難なく視聴できる
覚は3月いっぱいでここのショコラトリーを辞め、
半年間ゆっくり準備をして9月に自分のお店をオープンさせる。
人を雇ったりとか事務とかそういうのは、その道のプロにお任せ。
覚はあくまでも、自分がより気持ちよく楽しく自由にできる場所が欲しいだけ。
そんな風に言うとわがままするため
好き放題するための場所みたいで成功しなそうに聞こえるけど。
覚のチョコレートへの愛は本物で…
ってそんなの今の覚の実績と情熱大陸に取り上げられるあたりで明白か。
そう、だから何の不安も、心配もない。
ただただ楽しみだ。
ただ一つちょっと、気になることはあるけれど。
この際もう良いかな、いちいち説明を求めなくても、って思ってる自分もいる。
そんな私、このままで大丈夫?
ってちょっと自分じゃない目線でみると思ったりもするけど。
結局本質的な私の真ん中は、まぁいいやって思っちゃってるからどうしようもない。
あの日。
キッチンで泣いたあの日からもうずっと、覚が避妊具をつけてないこと。
それから、外に出すことすらしてないこと。
そんなことしないのはわかってるけど、
もし万が一逃げられたって、一人で育てる。
幸い手に職はある。
そんな感じで気になることを聞かずにいるけど…
こうして冷静に考えるとやっぱり、私、大丈夫かしら?
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『ねぇ、若利くん』
「何だ」
『覚はさ、良い父親になりそうだと思わない?』
「あぁ、思う」
『ね。 私さ、どんな形の家族もいいなって思うんだ』
「………」
『そこに愛があれば、どんな形でも。時に衝突があっても。すれ違いがあっても。
きっと最後はじーんて何かが残る』
「………」
『って、私には両親がいて普通〜にぬくぬく育ったから、ただの想像でしかないけどさ』
「俺は… 俺の両親は離婚しているが、父親からも様々なものを受け取った」
『…そうなんだ。 お母さんたちと暮らしてたの?』
「あぁ。だが父親から教わったものは計り知れない」
『うん。 そっか、なんか聞けて嬉しい。
もっと話したかったら聞くし、終わりなら終わりで。
若利くんの好きにしてね』