第1章 チェンバロ
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しばらく道の側で待ってみた。
っていうか、悲惨なことになってないといいけど。
そんなの申し訳なさすぎるな…
「あーお姉さん!よかったぁ、日本人だった」
少年が曲がった角の方を見つめてると、後ろから声がした。
「とりあえず英語で言うべきかポルトガル語かって迷ってたら
咄嗟に出てたの日本語だったからさ」
手には私のバッグ。コインだけ入れた、安価なバッグ。
「これ、一応中身確認して。パスポートとか、カードとか大丈夫?」
サングラスをとってにっかぁと笑う彼は、歳の頃はいくつだろう。
思いの外、少年と呼ぶ歳ではないのかも…
目を見てそう、なんとなくだけど、そう思った。
「お姉さん大丈夫?ショックで声出ない?」
『あ、ごめん。お礼も言ってなかった。ありがとう、ほんとに。
君が無事でよかったよ、本当』
「いや、お礼を言うのはまだ早いって!中早く確認して!」
『あぁ、そうだった』
バッグの中身を一応確認する。
財布もない、パスポートもない、コインだけのバッグ。
「ま じ か… おれ警察まで付き合うよ」
『あ、ううんいいの。これで全部』
「えぇっ!? 身分証とか持ってあるかねーの!?」
『えっと、パスポートはコピーして下着の中に。紙幣も』
「ほぇー なんか慣れて… えぇっ しっ下着!?」
目の前の少年… 青年?
いややっぱ、少年?の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「Finally,Ninja Shoyo has got a girlfriend!」
(ニンジャショーヨーにとうとう彼女ができたー!)
「ののののの… のっと まい がーるふれんどぉっ!」
お友達かな、通りすがりの青年に英語で茶化され
目の前の彼は首まで真っ赤になっている。