第2章 玉ねぎ
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思いの外、客が来て21時を回っても上がるように言われない。
時給制だし、対応する客の数が増えればチップがもらえる確率も上がるし、
いろいろ時間が長引くのはありがたい。
ありがたいけれど、彼はちゃんと暖かくしてるだろうか。
それがどうも気になってしまう。
なんというか、そういうところ無頓着そうな感じがした。
食べ物もきっと偏食だろうなという感じがする。
服装も寒ければちゃんとあったかい格好はしそうだけど、
なんだろうな… この急に冷え込む10月なんかは
ちょうど良いよりはちょっとやりすぎか、全然足りないのどっちかの格好で来そうというか…
勝手な憶測だけど…
「りさ子〜 デートの相手外に待たせてんのか?」
馴染みの客を店先まで送って行ったガブリエルがニヤニヤと聞いてくる。
『あ、やっぱ待ってたかぁ。 寒い格好してなかった?』
「寒い格好はしてなかったな。 むしろやり過ぎじゃね?って感じしたけど」
『あぁ… それならまだ安心』
「お。デートは否定しないんだな?」
『いや、そこは否定も何もだからスルー』
「赤毛の彼はパッショネイトなデートだって言ってたぞ?」
『パッショネイトなデート!?』
「わざわざ英語でpassionate dateって。
つーかフランス語、あいつ普通に上手いな。日本人なんだろ?」
『ね、それには感動したよ、私も』
…パッションフルーツとかけて、パッショネイトなデートってか?
いやそんなの、夜のパッショネイトなデートって言われたら
誰だって激しいベッドでの行為を思い浮かべるでしょうに…
何言ってくれてんだか、全く。
妖怪め。