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真っ白でいるよりも 【ハイキュー】

第1章 チェンバロ








翔陽くんの手が後頭部に添えられそのままぐっと引き寄せられる。





そして、唇がふっと重なった。

暖かく、優しく、そっと。



いっぱい太陽浴びてるもんね、
砂にも触れるし風も吹く。
すこしカサッとしたその唇は
とびきり、とびきり、柔らかく感じた。





「…ごめん、つい」

『………』






どうしよう、ただそっと触れただけのキスなのに。
動けなくなっちゃった。







「りさ子さん?」

『…お水 お水ね。 お水…』

「いーよ、おれのボトルここにあるから」







そう言ってメッセンジャーバッグのジップを開けて、
この間自転車についてたウォーターボトルを取り出した。

ごくごくごくと飲んでいくその、
喉が、喉仏が、色っぽい。

どうしよう、触れただけのキスで動けなくなるのに、
もっともっと触りたいとも思う。

そしてもっともっと触ってって思う。







「え? なんでそんなに… 綺麗な顔するの…」

『え?』

「今何時だ? 19時… どのくらいで終わるもの?
いやでも初めてだしやっぱ大事にしたいし…」







翔陽くんは何やらぶつぶつと喋ってるけど、よくわかんない。








「あ、そうだ。 それでさ、モーツァルトって何?」

『えっ』







聞こえてたの…?







「ごめん、目が覚めて、そしたらりさ子さんの声がしたから。
何言ってんのかなーって寝たふりしてた」

『………』

「モーツァルトにずっと会いたかったの? ってことは会えたってこと?」

『…ん、うん。 会えた』

「モーツァルトってあれだよな、音楽室に飾ってあった
髪の毛もさもさーふわふわーくるくるーってなった二重顎の人!」

『うん、それはバッハかな』

「…あれ? じゃあわかんねーけど、音楽室にいた人だよな!」

『うん、そうだね』

「え、まだ生きてんの? あの人たちって昔の人じゃねーの?」

『…昔の人たちだよ。 モーツァルトもバッハももうこの世にはいないよ。
私が出会ったのは、私だけのモーツァルト』

「…? へ、へぇ〜 でも良かったな!会いたかったんだろ?ずっと」

『うん、ずっとずっと会いたかった。 それから…』











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