第8章 空
「農家、モデル、バレーの日本代表選手、自然派志向な食品会社のマーケティング」
『……?』
「一般的なイメージやと、多分な、多分やけど」
『モデルとバレー選手、農家さんと食品会社の人?がお付き合いしそう…?』
「そうそう、もうあれやで、勝手なイメージやで世間への」
『…? あぁ、うん』
世間からのイメージはこうだろうという、治くんの抱く世間へのイメージということかな。
治くんはそういうとこから外れてる気がする、なんとなくだけど。
「ツムは北さんの元からの知り合いの食品会社の子と仲良うやってるし、
北さんとりさ子ちゃんもなんかそういう感じやし。
…おもろいよな、おもろいなー思うで」
『ふふ。 家庭的なとても良いお店をやってる治くんには不倫願望あるし?』
「だはっ しかもその相手の相手は、株式トレーダー兼ユーチューバー兼… あぁなんやねん、肩書き多すぎんねん。
とにかく一見鼻につく肩書き持っとるくせに、全然鼻につかんどちゃくそかっこええやつって」
『………』
「ほんでな、その俺の好きな子は研磨くんの肩書きなんて一切気にしてない子やねん。
何この世界。 おもろいなー思うわ」
『お漬物と渋皮煮の女性?は、アップルパイが好きなパートナーを持ってるお方?』
「そそ!研磨くんアップルパイが好きなんやってな、かわええよな。ずるいと思うわ、あの見た目で」
『…ほぉ』
一見私の方が近い業界にいそうなのに。
私の周りにはコヅケンに近い人はリエーフくらいで、他にいない。
いや居たとしても、みんな口外しないような感じなのかもしれない。
わけのわからない食事会とかに引っ張ってくるつもりはないというか。
なんであれ、私がもし紹介してと頼んでも名乗り出そうな人は居ないのだ。
…いやリエーフなら私の理由によっては紹介してくれたかもしれないけど、
別段そんな興味なかったし、そんな申し出はしたことないからわからない。
でも旅先でふらっと出会った2人が、コヅケンをよく知ってるなんてなんだか本当に。
『…ほんと、おもしろい世界だね』