• テキストサイズ

真っ白でいるよりも 【ハイキュー】

第8章 空






















「北さんやないすか!電話してくださいよ!」










いらっしゃい、と顔を上げて、信介さんを視界に捉えると
店の店主さんは穏やかな調子ででありながらも少々驚いた様子でそう言った。











「いや俺は送ってきただけやから。 ほんなら治、美味いもん食わせたってな。 これ…」









信介さんの田んぼからここまでは近くはなかった。
すごく遠いわけでもないけど、でも、送ってくだけなんて。

それなら駅とかにテキトーに落としてもらえばそれだけでも十分なのにってくらいには距離があった。

だからまだ一緒に時間が過ごせるって、ちょっと期待したんだけど、な。

信介さんは途中で買った差し入れを店主の方に渡してそれから、










「りさ子ちゃん、こいつが後輩の治。 治、東京から来たりさ子ちゃん。
ほんなら俺は行くな、またな、りさ子ちゃん」

「北さんこのあと用事あるんですか? そんな作業着のまま珍しいすね」

「…いや別にないんやけど、あれやし」

「………」

「なんでもないわ、じゃあな」

『え、用事ないんだったら……』









咄嗟に信介さんの服の裾を掴む。

なんでそんないきなり、素っ気ないというか…
去り際があっさりしすぎてて、寂しいし…








『一緒に居てくれませんか? 信介さんと居たいです私』

「そうですよ、美味いの作るんで北さんも食うてってください」

「いやでもあかんやろ、なんや、初対面の女の子連れまわしとるみたいであかん」

「へー初対面……そんな気せんなぁ、どっかで会うたこと……」

『あかんことないです! 信介さんになら連れまわされたいです!」

「りさ子ちゃん、何言うてんの。 そんなこと言うたらあかんよ、男は…」

『もーいいんです! 正論パンチはいらないの!』

「ぶははは…! もう北さんの正論パンチくらったん?」

『お願い、信介さん。 私もっと、信介さんといたい』

「…そんなこと言われたら、」









信介さんの瞳が小刻みに揺れる。
だってそうでしょ? もう会えないかもしれないのにそんなあっさりなんて、嫌。




























/ 225ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp