第8章 空
…って、え?
この、この、佇まいの美しい、且つ素朴でいい意味で質素な感じのこの人と、
世界のKODZUKENが知り合い…?
知らない人をくん付けで呼ぶ感じの人には見えないし…
『…お知り合いなんですか? コヅケンと』
「? 今その話してたんと違うん?」
『………?』
してた話は、この人が紅玉を送りたいなと思ってる相手の彼がアップルパイが好き、みたいなそんな感じ。
『え、あ、そのお知り合いの彼氏がコヅケンってことですか?』
「そうやね、彼氏、ではもうないんやろうけど。まぁ、そうそう」
『コヅケンとも面識あるってこと?』
「まぁ、そうなる。ええ男やよ』
『へぇ… なんかいろんなネットワークがあるんですね、さすが、世界のKODZUKEN。
こんな美しい田んぼを管理というか…手にかけてる人と知り合いだなんて』
「……研磨くんと知り合いなんてすごい、ってならんねや」
『え?』
「いや今普通にそうなるのが一般的な流れかな、思って」
『あぁ、いや、全然。コヅケンもパリピな感じとは程遠いし、よく知らないけど印象は良いので。
あれだけ財を成してるのに、仕事を成功させてるのに、あまりいない人柄というか。
そっかー彼は、こういう本当に美しい素敵なところと繋がってるんだ、って。
やるじゃん、さすがぁって。なりました』
「ははっ… それは、おおきに。 おもろい子やね。
…あ、申し遅れました、俺、信介云います。北信介です」
『信介さん… りさ子です』
名前、教え合っちゃった。
こんな、素敵な人と。
ありがと、りんご園。 ありがと、アップルパイ好きの彼。
ありがと、コヅケン!
『私すこし、なんだろう、派手な世界にいたりして。仕事で。
コヅケン、って名前を時折聞くんです』
「……」
『コヅケンに近付きたいのに、どこにもツテがない、みたいな。
高校時代の後輩だって友達も同業でいるんだけど、彼もその手の話には取り合わなくって。
その友達は硬派キャラじゃないのにどういうことなんだろ、って思ってたけど…
ただ、コヅケンは派手な世界には別に興味ないんだろうな〜とか、
男か女かはわからないけど恋人には困ってないんだろうな〜とかそういう憶測はしてました』