第8章 空
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りんご園はよかった。
緑に癒されたし、冷えてないどころか生暖かいもぎたてのりんごも格別の美味しさだった。
家には誰もいないので了承を得てマネージャーの家にりんご二箱と
ここのリンゴ園のプロダクトを詰め合わせたのを一箱送って。
リュックにはりんご5つとりんごのドライフルーツ。ストーレートのりんごジュース。
…くらいに留めた。 だって、流石に重いから。
それから少し、適当に歩こうと思いつく。
畦道とか歩きたい。
そう思ってくる時にみた佇まいの美しい田んぼに向かおうと思った。
田んぼはどれも美しいけれど、そして今の時期は黄金色に色づいていてそれはそれは、格別だけれど。
なぜだかはわからないけれど、さっき見かけた一帯の田園風景はその美しさが一際光を放っている気がした。
今まで見てきたそれの中で、一際、心を掴んで離さないような。
そして、目が釘付けになってしまうような。
丁寧な暮らしをしてる物腰柔らかくも芯の強いおばあさんと、
少々頑固だけど、農業へのまっすぐな想いを持ったおじいさんの田んぼ、みたいな。
そんな想像をしながら、歩みを進める。
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『…ほんっとに綺麗』
ほんっとに綺麗なんだ。
佇まいが。
なんだろうな、一つも惰性がないっていうか。
ぬかりないっていうか。
田んぼに直接関わることじゃないこと全ても、ちゃんと、してるんだろうなって想像するような美しさ。
子どもの頃、おじいちゃんの田んぼの畦道は何度も歩いたけど。
いざ今目の前にすると。
…完全に私有地だよね、って思って。
ここは公道かな、と思う車2台がギリギリ譲り合って通れるような幅の舗装された道を、
田んぼに挟まれたそのまっすぐな道を歩いてみることにする。