第7章 ひとりぼっち
・
・
・
さらさらと鉛筆を滑らせてる内にその動画はとっくに終わって、
いろんなのが勝手に流れだした。
途中、携帯をいじってる倫太郎が
「止める?」って聞いてきたけど、勝手に選んでないものが流れてくるのはおもしろい。
嫌な時はすごい嫌で鬱陶しいけど、今はそうでもなかったから。
このままでいい、って言った。
路上で演奏する、…演奏だけじゃないか、
路上でパフォーマンスをして投げ銭をもらうその、行為を?
バスキングと言うらしくて。
【to the labyrinth vol.1 … busking @ Byron Bay】
とかいう最初に倫太郎がつけた動画のタイトルに基づいてか、
バイロンベイという地名やバスキングに関連する動画が流れてきてた。
「…あ、これ」
『…んー?』
「今日話したやつ」
『今日話したやつ?』
言ってる意味がわかんなくて、
だってさっき話してたやつはさっき流したわけだし、
なんのことだろと思って、手を止めて画面を見た。
…倫太郎は無駄に反応しないし、
最初につけた動画も含めて、声を発したのは今が初めてだった。
だからかな、私も反応したんだと思う。
画面に映るのは、仮面舞踏会っぽい、
でも量産っぽくない綺麗で繊細なマスクをつけて、
しなやかに踊る人。
健康的な肌色で、長い綺麗な亜麻色の髪の毛を揺らして。
サーフタウンみたいな雰囲気あふれるビーチで踊ってる。
なにこれ、すごい… 綺麗。