第7章 ひとりぼっち
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「ふつーにラブホ街だよね、ここ」
たらふく食べて店を出て、てぼてぼと2人で歩いてる。
手とかは繋がなくって、でも肩が、腕が触れるくらいそばで歩いてる。
『ねぇ、倫太郎はさ一人じゃできないこと、たくさんの人としてきたの?』
「…俺にとっては一人じゃできんことなんて山ほどあるけど」
『………』
「何の話してんの?」
『それは、その……』
「………」
『…生殖活動』
「ブハッ……ちょっとやめて、せめて性行為にして」
『………』
「まぁいいか、生殖活動って言ったら確かに一人ではできん感すごいでるね」
『…それで、倫太郎は』
「そんなこと聞いてどうすんの?」
『んー… 誰としても一緒なのかな、とか気になって』
「そんなわけないよ。
そりゃ本当に生殖活動としてだったら目的果たせれば、
一人ではできんこと2人でやったってことになるかもだけど。
大した感情抱いてない人としても寂しくなるだけ」
『…そっか、そうだよね』
「なに?他の男としてみたくなった?」
倫太郎の声に、少しの苛立ちを感じた。
『そんなことありません!』
「…ふ 笑 ちょいちょい口調迷子になるよね」
『…迷子といえば』
「なに?」
『いまさら工芸科に惹かれてて』
「…あ、大学のこと?」
『うん』
「今は何科なん?」
『絵画科の版画専攻』
「版画も工芸みたいなもんに思ってしまうけど」
『倫太郎〜……』
「なに?」
『そう、そうでしょ、なんていうか絵画と造形の間みたいなとこあるでしょ』
「…うん、まぁ」
『私やってるの、木版なんだけどね』
「他になにがあるんか知らんけど、それで?」
『掘る作業がすごいすきなの単純に。描くより作るに近い作業でしょ?
それで工芸家の先輩とかの個展とか行ったりしてさ、工芸品を作れることにすごい惹かれてる』
「………」
『彫金、鍛金、鋳金、染色…いろいろあるけど、漆芸と陶芸にすごい惹かれる。
すごく、すごく身近でしょ。箸とかお茶碗とかコップとか、小さい頃からほぼ毎日、手にしてる』
「なるほど。身近なものを作りたいん?」
『…んー、迷子だからね、そこがよくわかんないんだけど」