第1章 チェンバロ
『…うん、それは君の力が大きい気がするけど、そういう事にしておいて。
じゃあ、ここからが本番。 もうちょっとだけフォーマルなのいくよ。 せっかくだし』
「えええ… これだけじゃないの!?」
『ふっふー 君は私のバッグを取り返すために命をかけて泥棒を追いかけてくれたからね』
「いっ命なんてっ」
『あれ、かけてなかった?笑』
「いやっそういうわけでもないけど…」
『冗談冗談。 しかも今これしてる理由もお礼じゃない。
お礼は昨日の日本食屋さんで済んだでしょ。 もう今はフェアな関係でいるつもりだから、私』
「いやいや、今これ全然フェアな状況じゃないっす!」
『…笑 お金を出す出さないだけで状況を判断しないで、お願い。
それはほら、スポンサーとの関係にちょっと似てると思って、片付けといて』
「りさ子さんはおれのスポンサーなの?」
『いや、生憎スポンサー的な位置にはなりたくないんだけど…』
「…なんだよっ! まぁいいや。 もー、任せます……」
『でも、さ。 ほんとに色々聞くから。 まぁまだブラジルはましか。中米より。
気をつけるんだよ、ニンジャ・ショーヨー。 あと数ヶ月の間、無事にいてくれよ』
「なっなんだよ、その変な喋り方!」
『…笑 あー、本当楽しい。 翔陽くん、もう先に言っとく』
「え?」
『あ、やっぱりこの店出てからにする』
「えぇっ!?」
『…笑 よーし、せっかくだからあれもこれも着て決めるぞー』
シャツにするかTシャツにするか。
シャツにするなら襟の形はどうするか…
ジャケットは着るか着ないか…
あんまりキザな感じやカチッとした感じにはしたくない。
ボトムはタイトにするかストレートかワイドか。
靴は革靴かスニーカーか、はたまたサンダルか。
店員とあれこれ相談しながら決めていく。
途中、一転してかっちりとタキシードを着せて遊んだり…
翔陽くんはたじたじになりながらも、
いわれるがままされるがままに着替えをしてくれた。