第7章 ひとりぼっち
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家に着いた。
大学生の私のの一人暮らしするアパートに駐車場なんてなくって。
近くのパーキングに停めて手を繋いで歩いてきた。
背中にはポピーのたっぷりと入った藤の籠。
泊まっていけば、なんて言ったけど、
男の人を家にあげるのなんて初めてで玄関の前で固まってしまう。
「どうしたの?」
『…いえ、なんでもありません』
「は?なんでいきなり敬語」
『………初めてで』
「は?」
『あ、いやなんでもありません』
鍵をポシェットから取り出して、開けようとするんだけど…
「いやほんとに、何してんの?ダイジョーブ?」
うまく鍵を開けられない上に、手を滑らせて落っことしてしまった。
それを倫太郎は拾ってくれて、
「開けてもいい?」
と確認したのちに鍵を開けてくれた。
扉は、開けずに鍵を渡してくれたので、
そろーっと扉を開ける。
「いやなんで。空き巣じゃないでしょ、自分の家だよね?」
こそこそとする私に倫太郎が怪訝そうにそう言う。
それもそうだな、と我に返って色々気持ちが軽くなった。
『いや、そうだよね、そうそう。普通が一番』
「あーよかった。このままあの調子でいられたら疲れるなーって思った」
『だよね、ごめんごめん。倫太郎、私ちょっとポピーをあれこれするから適当に座っててね』
「おかまいなくー」
冷蔵庫で冷やしておいたお茶をグラスに注いで倫太郎の前の机に置いて。
ポピーをいろんな容器に活ける。
この時のために買っておいた大きな花器とか、
バイト代をこれ用に貯めて買ったお気に入りのbjorn wiinbladの花器とか。
小さな空き瓶とか、モロッコグラスとか。
水切りをして、そういうのに浅く活けていく。
ポピーは花がすぐ散る。
だから蕾をと摘むようにと言われたけど。
散っていくのも萎れていくのもみたくて。
それから開いたポピーがいっぱいなのを、部屋でも見たかった。
だから私の摘んだ赤色がいっぱいと、
倫太郎の摘んだ白とオレンジと黄色。
それが今私の部屋にたくさん咲いてる。
幸せ!