第7章 ひとりぼっち
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かごに、いっぱいのポピー。
嬉しすぎる。
にやけが止まらない。
カゴを前に抱えて、ベンチに座って少し余韻に浸る。
『…倫太郎、連れてきてくれてありがとう』
「いーえ、いろいろおもろいからいいよ」
『ねぇ、ほんとに倫ちゃんて呼ばれても抵抗ないの?』
「それ言われたの初めてじゃないんだよね」
『なるほど。 …で?』
「絶対いや、って思ったし言った」
『うん』
「ほんでもまぁいっか、って思わされて、まぁいいよって言ったんじゃないっけ」
『へー』
「好きな小説の大好きな主人公が倫太郎で倫ちゃんなんだって言われて、悪い気はせんなーて思って」
『うん』
「まぁ結局幼稚園児だったんだけどね」
『え?倫ちゃんが?』
「そ。長編で成長してくらしいけど」
『…あ …そっかぁ 笑』
「いや笑い堪えるん下手すぎん?」
『グフッ……』
「………」
倫太郎の幼稚園姿を思い浮かべてみる。
快活な時があったのかな。
幼い頃から、この調子なんだろうか。
どっちでもいい、倫太郎はくせになる味がする。
そう思った瞬間、唇に柔らかなものが触れる。
『へ?』
「…笑」
唇からそれが離れて、でも倫太郎の顔がやけに近い。
「もっと、してもいいの?」
なに、今の柔らかいの。
それだけで身体が熱くなってく。触れられただけなのに。
…え、今のって………
「なんも言わんはイエスととっていいんだっけ」
そう呟くとまた唇に…
ってさっきと違う、もっと、なんだろ求められてる感じがして、
そして応えたいって身体が反応していく感じ。
これは何?
唇にそっと触れるだけじゃなくて、啄むようにいろんな風に触れる。
これは、キスだ。
私のファーストキス。
そして、今まで消えることのなかった一塊の想いが、すーと影を薄めていく。
…そんな気がした。