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真っ白でいるよりも 【ハイキュー】

第7章 ひとりぼっち








スニーカーを脱いで裸足で砂浜を歩く。







…確かに。
確かに気付かなかっただけで、足りなかったのかも。



海に来れば大体のことは解決すると思ってる。



四万十には豊かな川も山もあるけど、
この感じは、海にしかない。



ぜんぶ、持っていってくれる。
そして元気をくれる、わけじゃなくって。
ただ、そこにいてくれる。結果的に元気になるんだけどさ。




それから良いも悪いもなくって、ほんとただ。
フラットな状態に、戻してくれるんだ。





けどただ一つ、やっぱり。






こんなに幸せなのに一人ぼっちだなんてうしろめたい
って気持ちだけは無くならない。








『…倫太郎、ありがとう。 私やっぱ海、足りてなかったかも』

「あ、そ? 歩くだけで補充されるもん?」

『欲を言い出せばそりゃ、止まらないけど。でも、この風。この音。足の裏に感じるこの感触』

「………」

『それだけでもかなり、補充されてる』

「…ふーん」







それから結構向こうまで歩いて。
また駐車場の方に戻ってきて。





砂で遊ぶでもなく、ただ歩いた。
たまに波打ち際を。





それから水道で足を洗って。
階段のとこでちょっとぼけっとして、車でカフェまで。






自家製シロップのサイダーとか、カラフルな野菜いっぱいのランチプレートとか。
倫太郎がパン屋の分もカフェでの分も、全部、お金出してくれた。

なんか、変な感じする。
毎回、財布を出しても、お金を後から渡しても、

「いらんー」

だけしか言わないし。
コーヒー奢って?とかコンビニで水買って?とかそういうくだりも完全に端折ってる。






『倫太郎、これはどうかと思うよ』

「…なにが?」






摘み取り体験のできるポピー畑へと向かう車の中でどうにか話題に持ち出してみようとする。






『…そうだな、じゃあ、帰りにガソリンを満タンにした分出すね』

「は?りさ子が?いらん」

『…私だってバイトしてるんだよ?学生だけど』

「俺はバイト違うし。それにそのバイト代、画材とかそういうんに消えてくんじゃないの?」






それは、そうだけど… でも。






「っていうか、りさ子の行ってる大学って相当エリート? その界隈で」







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