第7章 ひとりぼっち
「地元海が近いんじゃないっけ?」
『うん、そうなんだけど。近すぎて、わかんなかったのかも。
今これ、地元離れて以来の海だから』
「あ、そーなん?サーファーでもそんなパターンあんの?」
『私はまぁ、海があったからやってたって感じが近いのかも。
倫太郎はサーフィンする友達がいるの?』
「いる。 その子は、海が足りん!とかなってしぼみそうな感じするよ、そんなに海入らんかったら」
『あー、まぁ想像つく』
うちの親も、地元の友達もそんな感じの子は多くいる。
『…そういえば、このTシャツは?』
「あー、それもその子がくれた」
Thrasherはスケボーのブランド。そのくらいはわかる。
『スケボーもする子なの?』
「そう。サーフィンやろうな、って会った日に約束して。
仲良くなってくうちに、俺とスケボーしたいって言うようになって」
『へぇ、したの?』
「うん、どっちもしたよ。スケボーの方がすきだった」
『ふーん、痛そうなのに』
「確かに。めっちゃ痛いよな、あれ。やったことある?」
『ある。 あれさ、こけるのも痛いけど』
「板が返ってきててぶつかるんめっちゃ痛い」
『そう、それ。高さもちょうど良く痛いとこ当たるし』
「ほんとそれ。好きなやつにしかできんよな、あれ」
『うん、好きなひとにしかできないと思う』
「……ほんならそこ車停めて、ちょっと浜歩く? サーファー結構おるね」
倫太郎が停めたとこの海にはサーファーがぷかぷか。
パドリングしてたり、ぷかぷか波待ってたり。
この海に反射するキラキラした太陽も、べとっとした潮を孕んだ風もこの波の音も。
四万十のそれとは違うけど、確かに海のものだ。
幸せ。
ほんと、それだけで幸せだ。