第7章 ひとりぼっち
「駅まで送ってく。明日はバイトとか?」
『ううん、明日はポピーに囲まれて過ごす予定だったからオフにしてる』
「…あ、そ。 俺も明日休み。 ポピー摘みに行く? 車出すよ」
『 ! 』
なにそれ。そんなこと言ってくれる感じなの!
倫太郎って、なんか…
「なに?」
『うん、行く。いいの?』
「いーよ。あんたかわいいし」
『 ? 』
「千葉まで行かん?確かあるよ、あっちの方。摘めるとこ」
『どこへでも行く』
「そんならうち、泊まってきなよ」
『倫太郎ってなんか… そういう感じなの?』
私そういう経験ないからわかんないけど…
「どういう感じ?」
『…わかんないけど』
「どうする?」
『うん、泊まる』
「変なことしない?」
『え?』
「とか、聞かんでもいいの?」
『しないから大丈夫』
「は?」
『っていうと思うからいい』
「…まぁ、いいわ」
そうしてコンビニで必要なもの…
メイク落としとか、とりあえずの下着とか買って倫太郎の家に。
別に飲み足りないわけでも食べ足りないわけでもないから
順番にシャワーを浴びて、だらだらとテレビを見て過ごす。
「俺、ベッドで寝るけどいい?」
テレビを見ながら歯磨きを終え、口を濯いできた倫太郎が言う。
『うん、もちろん』
「今布団持ってくるわ。それソファ背もたれ倒して寝れるから」
薄いお布団と枕、それから綿毛布。
適当に調節してって、言って渡される。
「…ちなみに海はすき?」
『海。大好き』
「サーフィンとかする?」
『サーフィンとかしてた、実家にいた頃』
「そーなん。実家どこ?」
『高知。四万十』
「へぇ… まぁいいや。 おやすみ」
『うん、おやすみ。 …あ、倫太郎』
「…なに?」
倫太郎はふっとこちらを振り返る。
『今日はありがとう。幸せです』
「は? …まぁ、いいわ、おやすみ」
『はい、おやすみなさい』
今日ポピーを摘めなくて、それ故にふらふらしてたらこうして出会いがあって。
そう思うと改めて、全部があるべきことで、そしてあぁ、私って幸せってなる。
だから、後ろめたい。
こんなに幸せなのに、ひとりぼっちだなんて、後ろめたい。
そんなことを今日もまた思いながら眠りにつく。