第6章 迷子
なんとなく、そこが区切りかなって思ってる。そのオリンピック辺り。
2年で会いにいくって思ったら日本にいると長いけど、
バックパック背負って、さぁ世界へってタイミングとなると、
え、短い。ってなる。
でもさ、オーストラリアでのがうまくいけば、
それから動画とか音源とかの配信をうまくやれば、
そういうのを上手くやるためにオーストラリアのワーホリビザをうまく使えば、
2年してとーるにあって、また次の土地へ行って、またとーるに会って、また…っていうのが
現実的になるなって思う。
歌うのは好きだけど、映像とか編集とかそういう知識も才能も皆無、と呟いたら、
「才能は開花させるものだよ〜」
ってチャラく言ってた。
チャラく言ってたけど、やっぱ私はそれもそうだなってなって、心持ちが全然変わった。
オーストラリアでバイトして、バスキングもしてがっつり稼いで、
そのお金で機材とか買って。
なんなら上手くやれば、動画や写真を撮りたいって人はいくらでもいると思うし、
センスのいい人と組めばいい。
あ、そうだ、センスってね磨くものなんだって。
それもとーるが言ってた。
そう思ってギターや歌にまっすぐ向き合うとなんとなく、なんとなくだよ?
磨かれていく気がする時がたまにある。 あ、今磨けた、みたいな。
とーるはいつだってがちがちに狭く固めがちな私の思考を、
最も簡単に広げてみせる。
さぁ、迷子になってごらん。
あっちにもこっちにも選択肢があるよ?って。
でもね、さっきも言ったけどとーるの世界にもう私は迷い込んでるから、
だからもう、世界の他のどこにいても、誰と出会っても、もう迷子にはならないんだ。
とーるは私の迷路で、地球儀で、
それから灯台で、世界地図。
次会ったときは、私がとーるを迷子にしてみせる。
それだけの魅力と人間性を携えて会いにいくんだ。
それでね、わざわざ2人で迷子になりにいくの。
巨大迷路に。
fin